知らせたいことを発信する!
PLEND!
豊橋にキャンパスのある3大学の学生が集まって制作するフリーペーパー「PLEND!」。豊橋技術科学大学の学生が呼びかけ、愛知大学、豊橋創造大学の有志が協働して、2017年春に創刊された。2年目からは愛知大学の学生地域貢献事業に採択され、活動を継続している。
「PLEND!」は、「特集 ぼくらが豊橋で、知りたいこと、知らせたいこと。」を表紙に掲げ、2017年3月に創刊した。呼びかけたのは当時、豊橋技術科学大学の大学院1年生だった荒川雅彦さんだ。滋賀県出身の荒川さんは、高専を出た後、技科大に編入し、豊橋にやってきた。最初の印象は、3つも大学があるのに豊橋のまちなかには学生がいない、ということだった。
“学生時代にしかできないことに
精一杯打ち込めた。”
「地元の情報誌はたくさんあるけれど、学生は置いてけぼりにされているように感じました。魅力的なお店や楽しい場所はあるはずなのに、学生に情報が届いてこない」
そこで近隣の大学に声を掛けて、学生による学生のためのフリーパーパー作りが始まった。豊橋市制110周年事業の補助金を受け、取材、撮影、編集、デザイン、広告制作まで、すべて学生たちの力で完遂した。「PLEND!」という雑誌名は、アメリカの建築家ケヴィン・リンチが唱えた都市を構成する5つのエレメント「パス(道)」、「ランドマーク(目印)」、「エッジ(縁)」、「ノード(結節点)」、「ディストリクト(地域)」の頭文字に由来する。豊橋のまちを、学生目線で「!(驚き)」を持って取材する、そんな意欲が込められている。
関わる学生たち一人ひとりの
個性を生かした誌面づくり
創刊号のページをめくると、サロン情報、御朱印めぐり、インドアスポーツ、ファッション、デートコース、銭湯などの情報が、おすすめする学生の「声」や「熱」のままに、手描きのイラストを混じえながら数多く紹介されている。ページごとにテイストはバラバラだが、制作に参加した学生一人一人のスキルやアイデアを生かすことで、作り手の温度がちゃんと伝わってくる構成だ。
「就職した今では、どれだけ時間があっても、もうできないというくらいの時間を費やしました。仕事では、時間と予算によってやれることが限られます。『PLEND!』には、時間もお金も関係なく、精一杯打ち込めました。学生時代に暇を持て余すことなく、好きなことに熱中できたのはラッキーでした」
“歩いてみないと分からない、
まちの魅力を伝えたい。”
全力を注いだ創刊号に、荒川さんはvol.1を付けたが、次号を出せるかどうかは分からない状態だったという。翌年度から愛知大学の学生地域貢献事業に採択されたことで、2号目以降につながった。
「学生主体の活動を支援する制度があることが素晴らしい。今後も大学間で連携して、続いてくれたら嬉しい」
そう願った荒川さんの言葉の通り、技科大生の協力を得ながら活動は継続し、2019年度末には5冊目となる「PLEND!」が発刊される。現在は愛知大学3年生の福住真凰さんが代表を務め、15人のメンバーを率いている。昨年はSNSへの移行計画もあり、ボリュームを落として4冊目を3・5号として刊行したが、今年度は企画から発行まで1年たっぷり使い、渾身の第4号が完成した。
「特集テーマは、渥美線沿線の駅近スポットです。始発駅の新豊橋駅周辺はこれまでにも紹介しているので、柳生橋から豊橋市南端の杉山駅まで、11ある駅を4つのエリアに分けて取材班を編成しました。私たちも通学に使う新豊橋と愛知大学前以外の区間はほとんど情報がなかったので、まずは各班でフィールドワークをして、お店を探すところから始めました」
まちの人の居場所になる
ローカルなカフェをフィーチャリング。
福住さんは大清水駅・老津駅・杉山駅を担当した。車窓から見ると畑や田んぼが広がるだけで、何もないように見えたところでも、歩いてみると地域に密着したお店があり、個性的なショップオーナーたちがいたことに驚いたという。豊橋は喫茶店が多いまちとして知られるが、郊外であっても、まちの人たちが憩いの場とするカフェが充実していることがわかり、このエリアでは、モーニング、ランチ、ティータイム、ディナーと、カフェをはしごして1日を過ごせるコースを提案することになった。
「カフェは居場所にもなるので、コミュニティの鍵になるスポット。チェーンじゃない個人経営のお店が駅ごとにちゃんとあって、お店側もお客さんも何気ない会話やつながりを大切にしている。そういう場所がある豊橋って素適なところだなと思いました。記事を読んで、この駅で降りてみたい、と思ってもらえたら」
お店の人もお客さんもワイワイと賑やかに楽しむカフェもあれば、1人の時間を静かに過ごせるカフェもある。地域の中に、そんな自分にとって居心地のいい居場所を持てたら幸せだろう。学生目線で綴られるまちの姿に、新たな発見を期待したい。