音のない世界に手を差しのべる、
ハートに届くコミュニケーション。
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はぁとふる

生産性、自己責任、迷惑防止…不寛容さの果てに起きたとも考えられる相模原市の障害者施設で起きた大量殺傷事件。相互理解が切実に求められる現代、「はぁとふる」のボランティア活動は、上から目線の支援ではなく、コミュニケーションから得る学びと理解を大切にしている。

夕暮れ時、送迎のクルマから降りた子どもたちが、住宅街の一軒家に元気よく集まってくる。「聴覚・ろう重複センター楓」は、3歳から18歳を対象とする放課後等デイサービスで、学校帰りや長期休暇などに学習支援等を行なう、聴覚障害を持つ子どもたちにとって学童保育所のような場所だ。まずみんなで長テーブルを囲んでおやつを食べ、それからレゴやカードで遊んだり宿題をしたりして、時間が来たらそれぞれの子どもたちは自宅まで送り届けられる。平日は10人前後、休日は15人くらいの利用があり、正職員2名、非常勤7名のスタッフがいる。「はぁとふる」のメンバーは、週に1回か2回、ボランティアとして活動を手伝いにやってくる。

Interviewee
大澤 尚佳さん
2016-18年代表
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“手話は生きた言語。
子どもたちにちゃんと言葉を返して
あげられるようになりたかった。”

「はぁとふる」は、現在4年生の大澤尚佳さんが入学してすぐ、同級生3人を集めて立ち上げた。大澤さんは、高校時代のボランティア活動や手話講座に通った経験を通して、人の助けになることで自分も成長したいと、学生地域貢献事業でも障害者福祉をテーマに選んだ。多くの学生が2年または3年生で学生地域貢献事業から引退する中で、就職活動と並行しながら、出しゃばらず、相談があれば乗るというスタンスを保って後輩たちの活動を見守ってきた。「子どもたちの手話は動きが早くて難しい。最初は頷くことで精一杯。ゆっくりでも会話が成り立った時が嬉しく、通いながら手話を覚えました。相手のことをよく理解した上で手を差し伸べるのが福祉だと思うので、知ることで自分も学びがあり、成長できると思います」

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障害が見えにくいからこそ、
家庭や社会で孤立感が生まれることも。

活動を始めた当初、聴覚障害支援を行なう事業所を調べたら、東三河では2ヶ所のみだった。児童を対象にしているのは楓だけで、利用者は遠方に住んでいることが多く、地元のコミュニティには居場所がなく孤立してしまいがち。また家族間でもコミュニケーションに障壁があることも少なくない。同じ聴覚障害であっても聞こえの差や、重複障害の有無によって必要なサポートが違い、さらに聴覚障害は見た目では分かりづらい難しさもある。学生たちは活動を通してこうした現状から多くのことを学び取っていく。聴覚障害を正しく理解してもらうため、彼らが考えたのが歩行者天国でのジェスチャーゲームだ。身ぶり手ぶりで伝えるジェスチャーは手話とよく似ている。聞こえないとはどういうことなのか、ゲームを通して理解・共感してもらおうという試みだった。それはまた、手話ができる人同士のコミュニケーションに閉じ込もりがちな耳が聞こえない子どもたちと、健常者とのコミュニケーションのあり方を模索しつつ、相手を知るために相手の立場に立とう、という大澤さんたちの優しい呼びかけでもある。

Interviewee
関山 遥さん
聴覚・ろう重複センター楓
管理者
介護福祉士
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“「聞こえない」とはどういうことか。
まず、聞こえない人の存在を
多くの方に知ってもらうことが大切。”

「学生がいてくれるだけで、楓にパワーが入ってきます。聴覚障害があると、思っていることを伝えられない、理解できないという壁があるので、コミュニケーションできる相手がいること、そういう場があることが大事」

そう語ってくれた施設管理者の関山 遥さんも愛知大学のOGであり、住宅会社への就職が決まった大澤さんに、「業界が違えども、ここで培ったものを活かして頑張って」とエールを贈った。