子どもたちと子育てママを
迎える、地域の居場所づくり。
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ええじゃない会

2013年から2018年まで活動した「ええじゃない会」。大学近くの多世代交流ひろば「ありがたや」ほか、地域のコミュニティカフェを訪問し、居場所づくりや運営を学びながら、活動をサポート。高齢者問題や少子化問題にも向き合い、学生による場づくりを研究した。

渥美線南栄駅近くにある昭和32年建築の古民家「ありがたや」は、「NPOまんま」が運営し、毎週木曜日には学校帰りの子どもたちや近所の人が自由に集う場として開かれる。土間のある空間は、小上がりにちょっと腰掛けて井戸端会議をするにもちょうどよく、もともと玩具屋だった空間のせいか、どこか懐かしく寄りつきたくなる温かな空気に包まれていた。

Interviewee
井口 芽友可さん
豊橋市役所
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“ええじゃない会の活動で、いろいろな世代の人との付き合い方が学べた。”

「ありがたや」には、子どもたちだけでなく、お母さんたちも子育てや家庭の悩み相談にやってくる。幅広い世代の女性たちが交流する姿を通して、井口さんはこの場所でコミュニティの大切さを教わったという。卒業後、豊橋市役所の防災危機管理課で働く彼女は、2019年に千曲川決壊による避難所運営に派遣された際、そうした地域コミュニティの有無が、非常時に明暗を分けることを目の当たりにした。

「プライバシーが制限される避難所ではストレスが溜まり、ちょっとしたことでも諍いが起こりますが、普段からコミュニティがしっかりしているところでは、住民の方が自主的に動いて、お互いに助け合い、秩序が守られていました。人間関係ができてないと、トイレ掃除や何から何まで喧嘩や揉め事の原因になります。日常的な人付き合いが大事なんだと痛感して、ありがたやさんのような地域の中の居場所の大切さを再確認しました」

Interviewee
渡辺 則子さん
特定非営利活動法人
NPOまんま 理事
Interviewee
牧野 規予さん
特定非営利活動法人
NPOまんま 専務理事
ええじゃない会

“気軽に立ち寄れて、気にかけてくれる人がいることが、お互いにとって癒しになる。”

もともと「ありがたや」ができたきっかけは、地域政策学部ができる前まで遡る。2006年に豊橋市制百周年事業のひとつとして、玩具屋さんだった空き店舗を使って、愛知大学の学生が駄菓子屋をオープンさせた。子どもたちが駄菓子を買に来たり、おもちゃで遊んだり、お年寄りが集まってきたりと、近所に保育園から大学まで集まるこの場所に多世代交流の輪が広がったのだ。これを1年限りで終わらせるのはもったいないと、NPOまんまが引き継ぐ形で「ありがたや」が誕生。その後、愛機政策学部が開設され、地域貢献事業が始まると、「ええじゃない会」のメンバーが「ありがたや」の活動をサポートするようになった。

NPOまんまの渡辺さんと牧野さんが迎えてくれる佇まいは、誰でも帰って来られる居間のよう。「ほんの短い時間でも、子どもたちやお母さんが顔を見せに来てくれると、わたしたちも元気になる」と、優しく微笑んだ。