市電の魅力を伝える女子大生メディア。
ACCOMPANY
全国的に路面電車の縮小・廃止が進む中、豊橋駅前から赤岩口、運動公園前まで伸びる豊橋鉄道東田本線は、1982年、1998年、2005年と、短いながらもジワジワと路線延長を重ねる稀有な存在。その沿線には噛めば噛むほど味わい深い「豊橋らしさ」が詰まっている。
2012年に「豊橋まちなかお店マップ」の制作でスタートし、現在も活動を続ける「ACCOMPANY」は、学生地域貢献事業の中でも老舗グループだ。豊橋駅前での街頭アンケートを集計・分析し、様々な年代・性別の人たちがおすすめする店を網羅した「豊橋まちなかお店マップ」は好評を博し、その後の「豊橋まちなかFacebook」、「豊橋まちなか看板娘マップ」へとつながった。学生目線で地域の魅力を掘り下げ、発信する中で、豊橋駅前でも販売されている知立名物「大あんまき」の新商品を、藤田屋さんとともに共同開発するといった展開も見せている。
“楽しい大人にいっぱい出会えた
ことが、卒業後の進路につながった。”
現在豊橋市役所都市計画課に勤める竹本甲歩さんが副代表だった2016年は、「路面deコトコトMAP」の制作に取り組んだ。市電と愛称され、豊橋のシンボルでもある路面電車と、昔から豊橋に数多い喫茶店・カフェ。ちょうどメンバー全員が女性だったこの年に、女子大生目線で沿線を取材・編集し、ビジュアル化したマップは、これまでにない市電の魅力を伝える仕上がりとなり、好評を得て翌年には増刷するまでに至った。
「豊橋には何もない、という声を聞くこともありますが、市外出身の自分から見ると、何気ない中にも思わぬ面白さが見つかる街。市電は1回150円で乗れて(※現在は180円)、沿線には老舗から新しいお店まで、いろいろなタイプのカフェがたくさんあります。ご朱印ガールも流行っていたので、パワースポット的な神社仏閣なども取り入れながら、カメラを片手に出かけて、市電を使ったまち歩きを楽しんでもらうマップを作りました」
“情報優先だとこうはならない、
学生さんならではの切り口が新鮮。”
市電を運営する豊橋鉄道株式会社は、取材から完成したマップの設置・配布までの全面的なバックアップに加え、制作費を賄うための協賛金でも協力してくれている。学生たちにとっては、取材活動と並行して協賛を募るのはハードルが高く、最初の訪問時には中心メンバー3人で、緊張の中、なぜ作りたいのか、どういう切り口で取材するのか、それによってどんなメリットを提供できるのか、きちんと用意した企画書をもとにプレゼンした。当時窓口となった河合秀文さんが、学生の熱意を買って温かく迎えてくれたことは、彼女たちにとって貴重な社会経験の一歩となった。
「愛知大学地域政策学部には弊社90周年の時に、路面電車をモチーフにしたマスコットヒーロー・東田戦隊シデンジャーの開発にご協力いただいた縁がありました。乗車マナー啓発のためのポスターに使ったり、今後はラインスタンプなども展開したいと考えています。そんなベースもあって、竹本さんたちから沿線マップを作りたいとの話をもらった際もスムーズに進みました。沿線マップも大人が考えると固いものになりがちですが、学生さんの目線でどういうものができるのか我々も楽しみでした。作り手のカラーや個性が出たほうが面白いので、邪魔をせずに作らせてあげたいという気持ちがあり、情報の正確性や掲載許可の確認といったチェックはしましたが、校正は最小限に留めて見守りました」
“地域貢献事業を通して、
たくさんの出会いと学びがあった。”
文学部に入学し、2年から地域政策学部に移った竹本さんは、学生地域貢献事業を通して人とのつながりやコミュニケーションなど、社会人になった時に役立つスキルを身に付けたかったという。「ACCOMPANY」に参加したことで、協力してくれた河合さんはじめ、取材先の店主さんたちや街の人々、市役所の職員など、多くの出会いを得て、卒業しても豊橋のまちづくりに関わっていきたいと考えるようになった。
「豊橋のまちが大好きだという人たちがたくさんいて、いろいろな分野で活動している方たちの存在が自分にとっても刺激になりました。何かしたいという学生や若い人の声を、受け入れてくれる土壌があるとも感じました。お世話になった方々に恩返しをする意味でも、学生の頃とは違う立場で、ずっとこの街に関わっていきたいと思います」