地域全体で子どもを守る!
SPIRITS
豊橋東部に位置し、静岡県との県境にあたる多米峠を背に、のどかな自然に囲まれる多米町。新興の住宅地も多く、子育て世代が多いこの地域では、PTAとは別に父親たちによる「多"米(ダメ)オヤジの会」が小学校区へのボランティア活動を積極的に行なっている。
土曜の昼下がり、多米公民館ではクラフトマーケットとともに子どもが遊べるブースなども用意され、付近に明るい笑い声が響いていた。年齢の違う子どもたちが集団で駆け回り、気軽に大人たちに話しかける姿も、近頃では新鮮なものに映った。
“子育てをするなら多米町がいいねって
ふたりで言い合ってるんです。”
「私たち、将来は多米町に住んで、旦那さんを多”米オヤジの会に入れるのが夢なんです」多米小学校区で学生地域貢献活動を続ける「SPIRITS」OGの辻田さんと岩田さんは楽しそうに笑った。それぞれ一宮市、名古屋市の出身で、現在は就職して遠方に暮らしているが、子育てをするなら多米町がいい、と口を揃えた。 子どもたちが安心して、のびのびと育つ背景には、地域をあげて一緒に子育てしようという住民ネットワークの存在が大きい。豊橋市郊外の多米校区では、父親たちによる「多”米(ダメ)オヤジの会」を中心に、家族で参加する地域イベントや祭りが一年を通じて何度も開催され、コミュニティの関係を熱く、あたたかいものにしている。
“何かあったときだけでなく、
常日頃のコミュニケーションが大事。”
そんな「多”米(ダメ)オヤジの会」が結成される背景には、ひとつの事件があった。平成13年、「ふるため」と愛称され、豊橋市民俗資料収蔵室として残されている旧多米小学校の校庭で、放課後遊んでいた女児が連れ去られた。2日後、無事に発見されたものの、当時PTA役員だった豊田一雄さんは、大きな安堵とともに再発防止にはお母さん任せではなく、地域全体で子どもを守る必要があると考え、「 多米オヤジの会」を結成した。それも何か起きた時だけではなく、父親と学校の先生たちが普段から親しく話をする関係が必要だと、最初に行なったのがバーベキューパーティだった。 「働き盛りの父親たちは、会社と家の往復だけで、地域とのつながりがほとんどない。普段から気軽に学校へ足を運びやすい状況を作り、父親同士の人間関係を築いておくことが、子育てのセーフティネットになるはず」
本気で遊ぶ大人から学生も子どもたちも
たくさんのことを学ぶ。
「多”米オヤジの会」はテレビの人気企画「逃走中」をもじった「大逃走中」、豚汁の具を賭けた山登り、ダンボールで間仕切りやテーブルを作る避難訓練、体育館のお泊まり会など、大人も子どももワクワクできるような遊び心あふれる企画をひねり出しては、子どもたちを楽しませ、父親たちの飲み会で締めくくる。学生たちも「大逃走中」では、スーツとサングラスで本格的なコスプレをして、見事ハンター役を務めた。夏祭りでのたません販売、プールサイドやジャングルジムのペンキ塗りなど、1年を通じて「多”米オヤジの会」の活動を手伝いながら、子育てと地域づくりの大切なSPIRITSを学んでいる。